ウイスキーについての理解を深めるために整理してみました。勉強途中ですので、参考として下さい。蒸溜所の数等も日々変化しております。適時修正して参ります。
歴史や文化を理解する目的で、一部、その歴史も踏まえて整理してみました。
ここでは、ウイスキーの情勢や基本に触れてみます。
■世界の勢力図
●上位企業
世界の蒸溜酒(スピリッツ)業界の1位はディアジオ、2位はペルノリカール、3位はサントリー(ビームサントリー)?です。
ビームサントリーは、2021年は3位ですが、2022年はデータ開示をしなくなったので、数字上の3位はバカルディ―です。
ウイスキーブランドでは、上位は、ほぼインディアンウイスキーです。
下記のジョニーウォーカー、ジャックダニエル、ジェムソン、バランタイン、クラウンローヤル以外は全てインディアンウイスキーです。ただ、恐らくインド人しか飲んでいないのではないかというほどよくわからない銘柄です。インドは人口が12億人もいて、更に日本を超える数の中産階級の層がおり、経済成長も毎年プラスです。また、熟成を行っていないので、高アルコールで安いウイスキーを量産しているので消費量が多いということも考えられます。現在は、インド国内の消費用の大衆ウイスキーがほとんどですが、今後は、輸出用の高級ウイスキーにも力を入れてくると思われます。
●新興国
一般的には世界5大ウイスキーが有名ですが、最近では台湾(カバランなど)やインドも含め7大ウイスキーなどと呼ばれる場合があります。他の新興国(ニューワールド)ウイスキーとしてフランス、イタリア、オーストラリア、ドイツ、ウェールズ、フィンランド、スウェーデン、スイス、タスマニア、イスラエルなどで製造されています。
2022年の販売数(統計ポータルサイト「Statista」のデータを参考)
1位 マクドウェルズ No.1 McDowell’s No.1 (3080万ケース)
2位 ロイヤルスタッグ Royal Stag (2710万ケース)
3位 オフィサーズチョイス Officer’s Choice (2490万ケース)
4位 インペリアルブルー Imperial Blue (2400万ケース)
5位 ジョニーウォーカー Johnnie Walker (2270万ケース)
6位 ジャックダニエル Jack Daniel’s (1460万ケース)
7位 ジェムソン Jameson (1110万ケース)
8位 ブレンダーズプライド Blenders Pride (950万ケース)
9位 バランタイン Ballantine’s (920万ケース)
10位 エイトピーエム 8PM (910万ケース)
11位 クラウンローヤル Crown Royal (840万ケース)
■ウイスキー業界のM&A
ウイスキー業界だけに限りませんが、M&Aによる業界地図は頻繁に変化しています。
ウイスキー業界は、下記で触れますボトラーズに限らず、蒸溜所の合併・買収などのM&Aも非常に多いです。一部出資を含めると更に多くなります。ある特定の蒸溜所のオーナーが何度も交替していることはざらにあります。
●主なM&Aの事例
①サントリーの傘下には、ビームサントリー(ボウモア蒸溜所、オーヘントッシャン蒸溜所など)があります。マッカランには出資をしていますので、日本国内ではサントリーが販売しています。
②身近なところでは、ニッカウヰスキーは、アサヒビールの完全子会社です。
世界最大のラム酒ブランドで、カクテルリキュールとしても有名な「バカルディ」は、スコッチのブレンデッドウイスキーのデュワーズなどのブランドを傘下にしています。さらに、オルトモア、ロイヤルブラックラ、アバフェルディなどのウイスキー蒸溜所も所有しており、「蒸溜酒全般を扱うブランドへと変化しつつあります。
④バカルディ」の所有している「カティーサーク」は、2023年4月にサッポロビールから変更され、アサヒビールが日本国内への輸入販売権を持っています。
⑤「ジャックダニエル」の日本への輸入権もアサヒビールでしたが、2024年3月31日をもって、アサヒビールの所有する「ジャックダニエル」の日本への輸入販売契約は解消し、2024年4月1日からは、米酒造大手ブラウンフォーマンの日本法人が販売することになりました。ブラウンフォーマンは、蒸留酒とワインのビジネスでは最大手の 1 つです。ケンタッキー州ルイビルに拠点を置き、ジャック ダニエル、オールド フォレスター、ウッドフォード リザーブ、グレンドロナック、ベンリアッハ、グレングラソー、エラドゥラ、コーベル、シャンボードなど、世界中で非常に有名なブランドを製造しています。
⑥「アーリータイムズ」は、以前アサヒビールが日本への輸入権を所有していた2022年9月から「明治屋」へ変更になっています。
■2台巨頭とサントリー
「ディアジオ」と「ペルノリカール」です。サントリーが追いかけています。
①ディアジオ
カリラ、タリスカー、ラガヴーリンなど約30ヶ所の蒸溜所を所有しています。さらに、「LVMH モエヘネシールイヴィトン」と共同で、「MHD モエ・ヘネシー・ディアジオ」を設立し、アードベッグ、グレンモーレンジ―のウイスキー蒸溜所やドンペリ、モエ・エ・シャンドンなどのシャンパーニュも傘下に入れています。
②ペルノリカール
「ザ・グレンリベット蒸溜所」を始め、ロングモーン、ストラスアイラ、10以上の蒸溜所やブランドを傘下にしています。
③サントリー
巨大ブランド2社を追いかけています。2014年サントリーは、「ビーム社」を1兆6500億円で買収し、「ビームサントリー」を設立しました。これによって、ジムビーム、メーカーズマーク、ブッカーズ、などなどのブランドを傘下にしました。
■ボトラーズ(インデペンデントボトラー、独立系瓶詰業者)
スコッチウイスキーを見ていると、「ボトラーズ」とか「インデペンデントボトラー」というものに出くわします。ボトラーズというのは蒸留所ではありません。ウイスキー専門の業者で、蒸留所からウイスキーの樽を購入して自分たちでボトリングし、自分たちのブランド名でウイスキーを販売します。蒸留所とは違うこのボトラーについても触れてみます。ただ、結構ややこしいので、簡単に触れておきます。
●(例)ゴードン&マクファイル
下記にも出てきます「ゴードン&マクファイル(Gordon & Macphail)」というインディペンデントボトラーは、100年以上の歴史があり、数々の有名なシリーズやボトルもありますが、実は、「ベンロマック蒸溜所」を所有しており、新たに「ケアン蒸溜所」を新設しました。そして、2023年7月に、「2024年以降、GM社は第三者の所有する蒸留所が造るニューメイクスピリッツの樽詰めを停止します。」と発表し、「GM社は、これから数十年をかけてゆっくりと、インディペンデントボトラー(独立瓶詰業者)としてのその歴史に幕を下ろし、自社蒸留所でのシングルモルト製造へ軸足を移していくこととなりました。」としています。
つまり、ボトラーズ会社が蒸溜所を傘下に収めたり、新たに蒸溜所を作ったりと、完全に区別はできなくなってきています。
また、オフィシャルボトルを販売せずに、ボトラーズ経由でしか販売していない蒸溜所もあります。それも、たまにオフィシャルボトルを出してみたり、出さなかったりと、年代によってもまちまちで、全てを把握するのは難しいです。
■ボトラーズの手法
「ボトラーズは、再販してるだけじゃないか」、と思われるかもしれませんが、ボトラーズはそれぞれ独自のこだわりを持ってウイスキーに変化を加えてきます。
例えば「ゴードン&マクファイル」は、蒸留所からニューポット(熟成前のウイスキー)を購入し、自社の倉庫にある樽に詰めて熟成させます。また他のボトラーズでは熟成されたウイスキーを購入し、別のタイプの樽に詰め替えてフィニッシュさせます。このようにさまざまな手法でウイスキーを産み出しています。
●ボトラーズの手法例
・自社の樽で熟成させる
・違うタイプの樽でフィニッシュさせる
・オフィシャルにない熟成年数でボトリングする
・カスクストレングスでボトリングする
・他のウイスキーと調合してブレンデッドにする
・どこの蒸留所のウイスキーを使ったのかを内緒にして販売する(シークレットボトリングと呼ばれる)
・容量を変える
・ラベルで遊ぶ
など唯一無二性、希少性、実験性、ユーモアなどがボトラーズによって高められ、ウイスキーの多様性を生み出しています。
■有名なボトラーズ
数あるボトラーズの中で、よく聞く名前をピックアップしました。
●ダグラスレイン(Douglas Laing)
●ハンターレイン(Hunter Laing)
●ケイデンヘッド(Cadenhead’s)
●コンパスボックス(Compass Box)
●ザット・ブティック-Y・ウイスキーカンパニー(That Boutique-y Whisky Company)
●ウィームス(Wemyss Malts)
●ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS:The Scotch Malt Whisky Society)
●アデルフィ(Adelphi)
●マーレイ・マクダヴィッド(Murray McDavid)
●ゴードン&マクファイル(Gordon & Macphail)
●レスト&ビー・サンクフル(Rest & Be Thankful)
●レディ・オブ・ザ・グレン(Lady of the Glen)
●クラクストンズ(Claxton’s)
●シグナトリー(Signatory)
■ボトラーズのウイスキーの表記
●ボトラー名 + 蒸留所名
ボトラーズのボトル表記は、ボトラー名 + 蒸留所名で、「ダグラスレイン グレンリベット12年」などとなります。ただ、それだけではなく、以下のようにインデペンデントボトラーの中でさらにシリーズがあることも多いです。
「ダグラスレイン」社の、「オールドパティキュラー」シリーズの、「グレンロセス12年」の表記は、下記のようになります。
・ダグラスレイン オールドパティキュラー グレンロセス12年
他にも、下記以上に把握できないほど多くのボトルがあります。
・シグナトリー アンチルフィルタードコレクション グレンリベット11年
・ケイデンヘッド オーセンティックコレクション ミルトンダフ12年
●ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)の表記
SMWSは、ちょっと違います。先入観なくウイスキーを楽しんでもらいたいとの思いから、蒸溜所名ではなく、蒸溜所をコードで表しています。そのため、ボトルには、コードしか表記がありません。ネットなど調べれば、コード番号に対する蒸溜所が出てきますので、お調べ下さい。ただ、適時新しい蒸溜所が追加されています。
例えば、コードNO.1は、「グレンファークラス」、コードNO.2は、「ザ・グレンリベット」コードNO.3は、「ボウモア」などです。200位のコードNOがあります。
当店も会員ですので、もう少し触れておきます。以下、SMWSのHPからの一部抜粋です。
●ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)の概要
・ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ』(SMWS)は、1983年にエディンバラの古い港町リースで設立されました。愛するウイスキーを仲間同士で分かち合い、認識を深めながら味わっていく、そして、なによりも楽しむために設立された世界で最初のウイスキークラブです。始まりは、創設者のピップ・ヒルズと数人の仲間が、スペイサイドの蒸留所から一樽を購入し、そのままの魅力的な味わいを分かち合ったことからです。これにより、「熟成されていたままのウイスキーを飲みたい!」という、SMWS設立当初からの方針・理念が生まれ、魅力的なウイスキー体験の幕が開けていきました。 現在は、世界20カ国・会員約35,000人を誇り、SMWS限定の特別なウイスキーを、ともに分かち合っています。
・SMWS会員は、専門のテイスティングパネル(識者)が厳選した、スコットランドをはじめとする150以上の蒸溜所から、市場に出回っていないウイスキーを独占的に味わうことが可能です。15,000以上の樽から厳選した一樽のみを、カスクストレングス(無加水)のまま瓶詰めして、さまざまな種類のウイスキーとして提供しています。さらに、同一デザインのボトルに統一して、ラベルにあえて蒸溜所名を記載せず、SMWSロゴマーク・蒸留年月・熟成年数・瓶詰年月・アルコール度数・蒸溜所コード・樽番号のみを記載することで、蒸溜所への先入観に捉われることなく、ウイスキー本来の味わいを楽しんでもらいたい想いを込めています。
日本の蒸溜所も増えてきております。
・当店も、数本ございますが、ボトル数も限られており、入手するのは、なかなか難しいのが現状です。ただ、カスクストレングスを由緒正しいボトルで飲んでみたい場合には最高のボトルかと思います。
■オフィシャルボトル
ボトラーズ(インデペンデントボトラー)に対して、「オフィシャルボトル」という言葉を目にすることも多いです。
「オフィシャルボトル」または「オフィシャル」というのは蒸留所で生産され、その蒸留所やブランドでリリースされたウイスキーを指します。「オフィシャル」は「公式」の意味なので、蒸留所公式のウイスキーです。要は通常のウイスキーです。
以下がオフィシャルボトルの一例です。
・ラガヴーリン16年(ラガヴーリン蒸留所)
・ラフロイグ10年(ラフロイグ蒸留所)
・スプリングバンク10年(スプリングバンク蒸留所)
・キルケラン12年(グレンガイル蒸留所のブランド名)
上記のキルケラン12年を見ても分かるとおり、必ずしも蒸留所の名前を冠している必要はありません。オフィシャルボトルのポイントは、その蒸留所でボトリングしたものだということです。
■ちょっとこだわり①
「蒸留」と「蒸溜」のどちらの表記を使うか?
「留」と「溜」の「さんずい」の有無
常用漢字である「蒸留」は公文書等で一般的に使用されますが、お酒業界では、「蒸溜」にこだわりのある場合も多いので、当店も「蒸溜」を使用します。
ウイスキーに限らず、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラと多くのスピリッツが該当する蒸溜酒ですが、ことお酒に関しては「蒸溜酒」と表記するのがこだわり?らしいです。蒸留とは、色々な成分からなる混合物の沸点の差を利用して分離、濃縮を行うことを指し、ウイスキーで言えば水とアルコール(エタノール)を分離、濃縮する人為的操作です。ちなみに、水の沸点は100℃ですが、エタノールは78.3℃です。エタノールの方が先に蒸気として気化するため、その蒸気を集めて冷却することで水と分離させ、度数を上げるのです。
前述した「蒸留酒」と「蒸溜酒」の違いは、「留」と「溜」の「さんずい」の違いですが、「水」を表す「さんずい」はお酒造りの現場ではお酒を表しているようです。サントリーなどのHPでは「山崎蒸溜所」、「白州蒸溜所」との記載です。「留」は常用漢字で、「溜」は旧字体です。当用漢字の制定が1946年です。常用漢字の制定は1981年です。日本最古の蒸溜所である山崎蒸溜所の開所は1923年、余市蒸溜所が1934年です。日本の2大ウイスキーメーカーがこの当用漢字の制定前に開所しているので、「留」の字自体が存在していない訳です。サントリー、ニッカが2番目の蒸溜所となる宮城狭、白州を開所したのがそれぞれ1969年と1973年と当用漢字の制定後に開所していますが、最初の蒸溜所に倣うのは当然の事のように思います。それがデファクトスタンダード(業界標準)となって蒸溜所には「蒸溜所」を使うのが一般的になったのかと思います。
■ちょっとこだわり②
「whisky」と 「whiskey」のどちらの表記を使うか?
「e」の有無
ウィスキーの英語表記には、「whisky」と 「whiskey」の二通りの綴りがあります。この問題について2つの考えがあるようです。
・1つは単純に地域の言語的規則の問題であり、スペリングは意図する対象者、背景、ライターの個人的な好みによって選択して良いというものです。
・もう1つは、その製品の伝統や精神を守るために綴りには拘るべきというものであり、少なくとも、ラベルに印刷された正しい名前を引用するとき、そこに印字された綴りは変えるべきではないという一般的なルールです。
・whiskeyの綴りは、アイルランドとアメリカ合衆国では一般的ですが、whiskyは、他の全てのウイスキー生産国で使用されています。そのアメリカでも元から使用法が一貫していたわけではなく、新聞のスタイルガイドが導入される前の18世紀後半から20世紀半ばまでは、両方のスペルが用いられていました。1960年代以降、アメリカのライターたちは、アメリカ国内または国外での製造に限らず、穀物由来の蒸留酒を、whiskeyとして使用するようになりました。ただし、ジョージディッケル、メーカーズマーク、オールドフォレスタ―などの有名なアメリカン・ウィスキーのブランドでは、whiskyの綴りが使用されており、全体を通して見てもwhiskyの使用は少なくありません。
●簡単にいうと以下のような感じです。
・WHISKY(スコットランド由来)
スコッチウイスキー、ジャパニーズウイスキー、カナディアンウイスキー
日本のウイスキーは、スコッチウイスキーをお手本にしているので、サントリーやニッカウヰスキーなどのウイスキーも「WHISKY」です。
元々カナダもアメリカもイギリス植民地ですが、イギリスと独立戦争をしたアメリカと違って、カナダは自治領として認められ、現在もイギリス連邦加盟国です。よって、イギリス(正式にはUK、スコットランドもUK)色が強く、スコットランド由来なのだろうと推測します。スコッカナディアンクラブやクラウンローヤルなどのカナディアンウイスキーも「WHISKY」です。
・WHISKEY(アイルランド由来)
アイリッシュウイスキーとバーボンウイスキー
ボトルを見ても、一方、ジャックダニエル(バーボン)やクーリー(アイリッシュ)、ジェムソン(アイリッシュ)などは、「WHISKEY」です。
■最古の蒸溜所
各社、自分が最古の蒸溜所だと主張している部分もあるようですが、いずれにしても、現在有名なブランドです。
●世界最古のウイスキー蒸溜所
ブッシュミルズ蒸溜所
「アイリッシュ、スコッチを含めて、全てのウイスキーの蒸溜所の世界最古である」との自己主張です。
1608年、北アイルランドのオールド・ブッシュミルズ蒸溜所は、ウイスキー蒸留の許可をイングランド王ジェームズ1世から得て操業を開始しました(正式な登録記録は1784年)。同蒸留所は、世界で最も古く認可されたウイスキー蒸留所を名乗っています。ブッシュミルズのすべてのボトルに1608が記載されており、「世界最古のウイスキー蒸留所」という称号を誇りに思っています。
●現存するスコットランド最古の蒸留所
グレンタレット蒸溜所
「スコッチの最古の蒸留所である」との自己主張です。
設立は1775年、と現存する最古の蒸溜所であることを主張しています。元々はHOSH(ホッシュ)蒸溜所と呼ばれていましたが1875年よりグレンタレット蒸溜所に改名しています。
1717年、密造時代、サロット蒸溜所
1818年、ホッシュ蒸溜所、酒造免許取得
1875年に、グレンタレット蒸溜所へ改名。
●スコットランド政府公認蒸溜所第1号
ザ・グレンリベット蒸溜所
最古のスコットランド政府公認蒸溜所(スコッチ)です。政府公認なので、自己主張ではないです。
1824年「ザ・グレンリベット」が史上初のスコットランド政府公認蒸留所となりました。ジョージ=スミスという造り手によるウィスキー『グレンリベット』の品質の高さは、密造酒ながら英国中で評判になっていました。やがてその品質の高さが認められました。俗説の一つとして、当時のイギリス国王ジョージ4世がスコットランドを訪れた際に、密造だったグレンリベットを飲み、これが税法改正に繋がったというものがあります。
■ウイスキーの定義
一般的には、「穀類を原料として、糖化、発酵の後に蒸溜をおこない、木製の樽で貯蔵熟成させてできるお酒」です。
ただ、「スコッチ」「バーボン」と名乗れる条件などは、原料、製法、熟成年数などが各国ごとに定められています。
■ウイスキーの原料による種類
(1)モルトウイスキー
麦芽(モルト、通常は大麦麦芽)が原料です。
風味の個性が強いため、ラウドウイスキーとも呼ばれます。
対してグレーンウイスキーはサイレントスキーとも呼ばれます。
●①シングルモルト
単一蒸溜所のモルト原酒のみで作られたウイスキー
●②ブレンデッド・モルト(ヴァテッド・モルト)
複数の蒸溜所のモルト原酒を混ぜ合わせて製造
●③シングルカスク
1つの蒸溜所の中の1つの樽で製造されたウイスキー
●④ピュアモルト
多くの場合はシングルモルトウイスキーと同義です。
複数の蒸溜所のモルトをブレンドしたヴァッテドモルトウイスキーを指す場合もあります。
(2)グレーンウイスキー
トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀類が原料です。
ウイスキーの中でもクセが少なく飲みやすいため、サイレントウイスキーと呼ばれます。
●①シングルグレーン
単一蒸溜所のグレーンウイスキーのみで作られたウイスキー
●②カフェグレーン
ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所などで造られています。
「カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル)」で蒸溜されているグレーンウイスキーです。「カフェ」とは蒸溜機の種類であり、コーヒーではありません。
(3)ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒をブレンドしてつくったウイスキーです。
スコッチウイスキー全体の消費量の90%以上を占めているともいわれ、ブランドの数も多いです。ブレンデッドウイスキーは、飲み易くしたり、安価にしたりと改良を加えてウイスキー人気・ウイスキー文化を支えています。最近は、モルトウイスキーが注目を浴びている感じもしますが、ジョニーウォーカーやシーバス、日本では、サントリーの響、オールド、角など多くのブレンデッドウイスキーがあります。一般の酒小売店に並んでいる(安価)多くはブレンデッドウイスキーです。しかし、ジョニーウォーカーブルーラベルなど、高級で稀少な銘柄も沢山あります。
■ウイスキーの樽の種類
ウイスキーの熟成樽は、ワインなど別のお酒の熟成に使用していた樽をウイスキーの熟成樽として再利用します。その以前に熟成していたお酒の種類よって味わいが大きく変化します。お酒を一度熟成させた樽を再利用することで風味を付与したり、木材の種類によっても香りや味が異なります。樽の大きさも色々あります。
●樽の大きさ
一般的なバレル樽(約200L)からは、一般的な700mlのボトルは約300本弱しか製造出来ないことになります。「ホグスヘッド樽」は、250Lの樽です。
●熟成樽の種類
以前に熟成していたお酒の種類によって、樽の種類も多岐に渡ります。主な種類を下記に上げておきます。
・シェリー樽(オロロソ、ペドロ・ヒメネスなど)
・ワイン樽(ポート、マデイラ、マルサラなど)
・バーボン樽
・ビール樽
・ラム樽
・ブランデー樽
●材料による樽の種類
ウイスキー樽は材料となる木材によって呼称されることもあり、材料によってもウイスキーに付与する風味が異なります。主に下記の3つの分類に分けられます。
①アメリカンオーク樽
②ヨーロピアンオーク樽
③ミズナラ樽(ジャパニーズオーク)
■カスクストレングス、シングルカスク(バレル)
「カスク」とはウイスキーを熟成させる木製の樽のことです。「バレル」とはウイスキーの熟成に用いられるカスク(木製の樽)として多く使用される大きさ(酒類の貯蔵用の場合は約200L、国や地域、用途などで多少異なります)です。他にも、ホグスヘッド(約250L)、パンチョン(約300~500L)、ドラム(約650L、日本のドラム缶は約200L)など数種類の大きさがあります。「ストレングス」とは「強さ」を意味しますが、ウイスキー用語ではアルコールの強さ、すなわちアルコール度数のことです。
よって、「カスクストレングス」とは「樽のままのアルコール度数」のことです。樽のなかで熟成のピークを迎えたウイスキーを、そのまま瓶詰めする際のアルコール度数を意味しています。
よく「ウイスキーは生き物」といわれるように、ウイスキーの品質や味わいは、樽内で熟成されるうちに変化していき、カスクストレングスは樽ごとにそれぞれ異なります。
同じ蒸溜所で、同じ時期に造られたウイスキーであっても、1樽ごとでそれぞれ異なってくるものです。造り手が選び抜いた、単一の樽からのみ瓶詰めした「シングルカスク(単一樽)」が珍重されるのはそのためです。
アルコール度数も同様で、同一の蒸溜所で、同時期に造られたウイスキーでも、カスクストレングス(樽の度数)は樽ごとにそれぞれ異なります。シングルカスク(単一樽)ではなく、大量生産する場合などは、複数の樽を調合・調整・加水・瓶詰などを行ない、品質を安定化・統一化させて出荷します。最終的に各社のブレンダー(機械ではなくて人です)の味覚を頼りに行なわれます。各社のブレンダー(チーフブレンダー、マスタブレンダー)は、ウイスキーの味や風味を決めるなど、その会社の重要なポジションです。サントリーの初代マスターブレンダーは、創業者の「鳥居信治郎」で、ニッカウヰスキーの初代ブレンダーは、やはり創業者の「竹鶴政孝」です。そのブレンダーにより造られたウイスキーを、ブレンダーに敬意を表して、最初の一口は、そのままストレートで味わってみてはいかがでしょうか?
「カスクストレングス」のもうひとつの意味
「カスクストレングス」について調べてみると、先ほどの定義とは異なる説明がされている場合もあります。
「カスクストレングス」は、「樽から出されたままのアルコール度数で、加水されずに出荷されるウイスキー」というように、ウイスキーの分類上の用語としても用いられます。もともとの「カスクストレングス」の意味が転じたものと考えられますが、どちらを意味しているのかややこしいため、「カストストレングス」と「カスクストレングスのウイスキー」と使い分けている場合もあります。
カストストレングスのウイスキーが珍重される理由
カスクストレングス(樽そのまま)のウイスキーは、「至高」とされるシングルカスク(単一樽)以上にマニア向けのウイスキーといえます。一般に、ウイスキーは瓶詰めされる前に、複数樽の原酒からブレンドしたり、加水してアルコール度数を下げたりと、飲みやすくなるよう調整されます。カスクストレングスの場合は、こうした調整がなく、原酒そのままの味わいとアルコール度数で供給されます。まさに、「何も足さない」、「何も引かない」ウイスキーの楽しみ方が、カスクストレングスです。
「カスクストレングス=シングルカスク」ではない?
カスクストレングス(のウイスキー)の説明として、「シングルカスクを加水せずに瓶詰めしたウイスキー」というのもありますが、一方で、「カスクストレングスも複数樽の原酒を混ぜる場合がある」との説明もあります。
先述したように、ウイスキーのアルコール度数は樽ごとに異なります。複数樽から混ぜるということは、異なる度数の原酒を混ぜることになり、「樽のままのアルコール度数」という定義からすれば、後者の説明には違和感があります。
ただし、カスクストレングスはシングルカスクやシングルモルトと同様、法律で明確に定義されているわけではありません。「樽のままの原酒に加水していない」との理由で「カスクストレングス」を名乗っても、決して間違いとは言えません。細かな定義にとらわれるより、レアなウイスキーならではの個性をたのしんで頂いたほうがよいかもしれません。
カスクストレングスのアルコール度数は60度近くに
カスクストレングス(のウイスキー)は、樽内で熟成された原酒に加水などの調整を加えてないため、一般的なウイスキーよりもアルコール度数が高くなります。市販のウイスキーでは、40~43度ほどに調整されるのが一般的ですが、カスクストレングスの場合、もちろん樽ごとによりますが、60度近くになる場合もあります。
カスクストレングスは水との変化をたのしもう
カスクストレングスの魅力は、樽のままの原酒そのものの味わいにありますので、「何も加えずにストレートでたのしみたい」という方、「度数の強いウイスキーに慣れている人」なら、アルコールのダイレクトな刺激を楽しめるかと思います。
「お酒に強くない」という方には、少量の水や氷で割ると多少飲み易くなります。少しずつ水を加える度に味見をして、香りや味の微妙な変化をたのしんでください。
カスクストレングスは、マニア向けのウイスキーと言えます。普段、楽しんでいるウイスキーが、どのように調整されて瓶詰めされているか、その過程を実感できる楽しみもあります。