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日本酒・焼酎のお勉強

日本酒と焼酎についても簡単に触れておきます。

やはり、最近でこそ「Sake」で通じるようになりつつありますが、以前は「Japanese rice wine」とも表現されていた「日本酒」や、最近でこそ「Shochu」でも通じるようになってきましたが、「Japanese distilled spirit」としか表現できなかった「焼酎」は、日本の伝統文化でもあるので、少し触れておきたいと思います。

■日本酒
酒類は、製造法による分類と酒税法による分類があります。日本酒は、製造法では「醸造酒」に分類され、酒税法では、必ず米を使うこと、そして「こす」という工程を必ず入れなければならないことが定義づけられています。
※「清酒」とは、海外産も含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く指す言葉で、「日本酒」とは区別されています。「日本酒」は、清酒の中でも原料である米、米こうじに日本国内産米のみを使用し、日本国内で醸造したもののみを指します。そのため、海外産の米を使用した清酒や、日本以外で製造された清酒が国内に輸入されたとしても、「日本酒」と表示することはできません。

■日本酒の分類
日本酒は、「特定名称酒」と「普通酒」に分けられます。
「普通酒」とは、吟醸酒や純米酒、本醸造酒などの「特定名称酒」として分類されない日本酒のことです。「普通酒」という名前はあくまでも通称なので、店頭に並んでいる日本酒を見ても「普通酒」という表示のあるものは基本的にありません。精米歩合70%以上の米や、特定名称酒に使われているもの以外の原料を用いたり、醸造アルコール量が10%を超えるものなどがあります。普段よくスーパーで目にする紙パックのお酒や、居酒屋などでメニューに「日本酒」とだけ書かれているお酒は、ほとんどが普通酒です。普通酒は私たちが思っている以上に生活に浸透しています。しかし、特定名称酒以外の日本酒である「普通酒」が、手間ひまのかかっていない、不味いお酒というわけではなく、特定名称酒に分類されなかった普通酒として扱われる日本酒のなかにも、美味しいものはたくさんあります。
日本酒のラベルに「吟醸」や「純米」と書かれているのは、お米の精米歩合や原料などの条件を満たした「特定名称酒」の呼び名です。「特定名称酒」は原料で主に3つに分類され、さらに精米歩合などにより8つに分類されます。

■特定名称酒
特定名称酒とは、所定の条件を満たした日本酒です。「純米酒」「吟醸酒」「本醸造酒」の3つに大きく分けられますが、さらに、原料と製造方法の違いによって、「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「大吟醸酒」「特別純米酒」「特別本醸造酒」の5つが加わります。
・特定名称酒の分類
特定名称酒の8つに分類する基準は、国税庁で定義されています。
日本酒 (特定名称酒) を分ける2つのポイント
①精米歩合
精米歩合とは、日本酒の原料となる玄米を表面から磨いた(削った)際に「残った割合を%で示したもの」です。
例えば、精米歩合が60%以下の日本酒なら、玄米を40%以上磨いた米で造られています。磨けば磨くほど、精米歩合の数値が小さくなるのがポイントです。
精米歩合に着目した分類では、70%以下を「本醸造酒」、60%以下を「吟醸酒」、50%以下を「大吟醸酒」と、規定されています。
②原料
日本酒の原料は、米・米麹・水・醸造アルコール(サトウキビなどを原料にした蒸留酒)です。このうち、醸造アルコールを含んでいない日本酒には「純米」という名称がつきます。

2つのポイントを整理して日本酒 (特定名称酒) を下記に分離しました。
純米酒(醸造アルコールを含まない)
純米大吟醸酒  50%以下
純米吟醸酒   60%以下
純米酒     規定なし
特別純米酒   60%以下又は特別な製造方法(※)
吟醸酒(醸造アルコールを含む)
大吟醸酒    50%以下
吟醸酒     60%以下
本醸造酒(醸造アルコールを含む)
本醸造酒    70%以下
特別本醸造酒  60%以下又は、特別な製造方法 (※)
(※) 製法に決まった基準はないですが、「長期低温熟成」や「有機米のみ使用」などが挙げられます。

■種類別日本酒の呑み方
純米酒
①純米大吟醸酒
米と米麹と水のみを原料として、精米歩合50%以下 (お米の半分を磨いているってことです)ということで、雑味がなく透明感のある味わいと華やかな香りが特徴です。10~15度の冷酒にすることで、その特徴を最大限に引き立ててくれます。
②純米吟醸酒
純米大吟醸酒よりも米の磨きを押さえていますので、吟醸酒ならではの香りを楽しみつつも米の旨味も感じことができます。10度程度に冷やして呑むのがオススメです。
③純米酒
精米歩合についての条件は特にありませんが、醸造アルコールを添加していないため、米本来の旨味とコクを味わえます。冷やしてもよし、常温でもよし、熱燗でもよし、温度によってさまざまな楽しみ方をできるのが特徴ですが、純米酒ならではというところで常温~ぬる燗が特にオススメです。
④特別純米酒
名前のとおり、特別な製法によって造られていますので酒蔵によって特徴は様々です。造り手さんの想いやこだわりを調べながら、いつもとは違う特別な日に味わう、なんて楽しみ方もよさそうです。
吟醸酒
⑤吟醸酒
なんといってもフルーティーで華やかな香りが一番の特徴です。10度程度に冷やして、香りを存分に楽しんでください。
⑥大吟醸酒
吟醸酒との違いは精米歩合が基準になるため、味わいに大きな違い差はありませんが、大吟醸酒は香りがより高くライトな口当たりのものが多いです。こちらも10度程度に冷やして、香りも楽しんでください。
本醸造酒
⑦本醸造酒
米・米麹・水、そして醸造アルコールを原料とし、精米歩合70%以下の米を使用しているため、米の旨味を感じながらも、スッキリとした辛口に仕上がっているのが特徴です。キレのある味わいを楽しみたい方は、5度前後にしっかり冷やして呑んでみてください。
⑧特別本醸造酒
本醸造酒ならではの辛口でキレのある味わいに、アクセントをプラスすることができる日本酒です。酒蔵それぞれに個性がありますので、どのような製法で造られたのかチェックしながら呑み比べてみてください。


■焼酎
日本の酒税法では「アルコール含有物を蒸留した酒類」のうち、以下の条件を満たす酒類を焼酎としています。
酒税法に原料、製法等の定義があり、アルコール度数は連続式蒸留焼酎で36度未満、単式蒸留焼酎(本格焼酎)で45度以下と定められています。日本国内では酒税法によって種別基準が定められており、連続式蒸留焼酎(旧甲類)と単式蒸留焼酎(旧乙類)に分けられています(2006年5月1日酒税法改正による)。大衆酒として広く飲用されてきた歴史があり、酒税は政策的に安くされていました。1989(平成元)酒税法で「新式焼酎」にあたる「焼酎甲類」と、在来焼酎にあたる「焼酎乙類」の区分が制定され、後にそれぞれ「連続式蒸留焼酎」「単式蒸留焼酎」と名称変更されました。酒税法では、以下のように定義されています。

■甲類焼酎
・連続式蒸留器で蒸留
・アルコール度数35度未満
・材料は酒粕や廃糖蜜を原料とする発酵液です。
■乙類焼酎
・単式蒸留器で蒸留
・アルコール度数45度未満
・米・麦・蕎麦などの穀類、芋類、清酒粕、黒糖などの国税庁長官が指定する49品目から造られます。
■混和焼酎
・連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)と単式蒸留焼酎(焼酎乙類)をブレンド(=混和)した焼酎をいいます。
・焼酎甲類が多い場合は「焼酎甲類乙類混和」、焼酎乙類が多い場合は「焼酎乙類甲類混和」と表示します。
・酒税法上は、混和率の多い方に分類されます。

■焼酎の定義
①ウイスキーとの区別
発芽した穀類を使用していない。
②ブランデーとの区別
果実(なつめやしの実を除く)を使用していない。
③ウォッカとの区別
白樺の炭などで濾過していない。
④ラムとの区別
砂糖、糖蜜などを使用していない(黒糖焼酎を除く)。
⑤ジンとの区別
⑥蒸留の際発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させていない。
⑦蒸留時に別途定められている物品以外を添加しない。
⑧アルコール度数が連続式で36度未満、単式で45度以下である。

■焼酎に関わる価格(酒税法)の歴史
1875年(明治8年)の酒税法制定以降、1890年代においては酒税収入が国税の30%~40%を占めるようになりました。これは、日清戦争(1894年-1895年)後の歳入不足を補うための貴重な財源でもありました。税を逃れるために密造酒が増え、特に取締りの行き届かない地方の農村部で密造が増えました。
そして、1945年(昭和20年)8月14日のポツダム宣言受諾による第二次世界大戦終了後、密造酒の製造は1952年(昭和27年)から1953年(昭和28年)頃までが最盛期でした。その後は戦争直後の混乱の収束による密造集団の自覚と、密造焼酎の淘汰を図る政策によって20%以下の酒類の税率を低くして、密造を税務署の指導によって密造集団が合法会社に転換するなどしたため、密造集団は昭和40年代までに消えていきました。
また、酒造会社の再開により合法で品質の安定した酒類が流通するようになると、粗悪なバクダン酒(軍用燃料アルコール)やカストリ酒(粕取焼酎、密造酒なので粗悪)は消えていきました。そして、従来、焼酎は庶民が疲れを癒すために飲むものであって、ウイスキーや清酒は贅沢品であるというような風潮があり、「ウイスキーは高級品であり、焼酎は庶民が飲む酒」ともいわれていました。よって、焼酎は酒税の税率が低かったのです。
1980年代以前は、酒税は原則として従量税で、一部の高価格酒(清酒特級、ウイスキー類など)のみに従価税を適用していました。しかし貿易自由化が進み、関税や酒税が高い海外(特にEU)のウイスキーなどの蒸溜酒の国内での流通価格が高く、日本国内での価格競争力が低下していたため、EU等の圧力もあり、1997年(平成9年)の酒税法改正により蒸溜酒間の税率格差是正が決まり、焼酎の税率が上がり、ウイスキーの税率が下がるなど、段階的に是正されることになりました。1980年代にヨーロッパ諸国が日本の酒税制度は貿易障壁であると改善を求め、ガット(GATT、関税および貿易に関する一般協定)が日本に酒税制度を是正するよう勧告しました。
消費量が増える酒類は担税能力が高いと判断して増税し、消費が低迷する酒類は減税する傾向にあります。第二次世界大戦後、清酒、ビール、ウイスキーの酒税は増税を繰り返したが、清酒消費が低迷した平成期(1989~2019年)に入ると、ビールを増税しました。
1989年酒税法改正で、従価税と清酒・ウイスキーの級別制度を廃止し、ウイスキーなどの税率を下げました。
1994年のビール増税に対し、ビール会社は麦芽使用量を規定(67%以上)より抑えるなどした「発泡酒」を開発しました。
1996年には世界貿易機関(WTO)から焼酎とウイスキーの酒税格差是正を勧告され、ウイスキーの税率を下げ、焼酎の税率を上げました。
2003年の発泡酒増税時には、麦芽を使わずにエンドウ豆などでつくった「第3のビール」を開発し、新商品開発で増税に対抗してきました。この結果、似た味のビール系飲料であるのに「ビール」「発泡酒」「第3のビール」の税額が異なるという日本独特のゆがみが生じました。
その後も、ヨーロッパ諸国より日本の酒税制度(10種類に分類)が複雑との批判を受け、2006年酒税法改正で、ビールなどの「発泡性酒類」、日本酒やワインなどの「醸造酒類」、焼酎やウイスキーなどの「蒸留酒類」、梅酒やチューハイなどの「混成酒類」の4分類に簡素化しました。
2017年酒税法改正で、2020年10月から2026年10月にかけて段階的に三つのビール系飲料の酒税(350ミリリットル)は54.25円に統一されます。「ビール」を22.75円減税する一方、「発泡酒」は7.26円、「第3のビール」は26.25円、それぞれ増税されました。日本酒類、ワイン類、チューハイなどの低アルコール飲料の酒税(350ミリリットル)は35円に統一されます。日本酒類は7円の減税となる一方、ワイン類や低アルコール飲料は7円増税とし、酒造会社やビール会社に世界市場での競争を促しています。
さらに2017年改正では、海外市場を開拓する目的で、訪日外国人に対し国内酒蔵やワイナリーでの酒税免税制度を導入しました。現行制度も従量税の形式をとっており、4分類ごとに基本税率を定め、さらに細かな種類やアルコール分ごとに酒税率をきめています。

■焼酎の原料による種類
米焼酎
米と米麹から作られる焼酎です。後述する粕取り焼酎は清酒を醸造した酒粕から蒸留されますが、米焼酎は米を精米し、米麹と掛け合わせることで生産されます。主な生産地は熊本県人吉市を中心とする球磨盆地です。また、最近では清酒蔵が清酒製造の閑散期に米焼酎の蒸 留をすることが増えており、全国各地で米焼酎が生産されるようになっています。香りや味わいは吟醸酒に近く、比較的焼酎初心者でも取っつきやすい本格焼酎といえます。従来、減圧蒸留で作られる銘柄が主流でした。しかし、このところの本格焼酎ブームで米焼酎が本来持っている香りや味わいを見直す動きが大きくなり、それにともなって従来の製法で作られた米焼酎が徐々に増えてきています。

麦焼酎
大麦と大麦麹、あるいは米麹から作られるのが一般的です。従来大都市圏では本格焼酎といえば麦焼酎というイメージがありました。「いいちこ」やの「二階堂」の知名度によるところが大きく、1975年(昭和50年)代~1985年(昭和60年)代の第一次本格焼酎ブームの際にはボトルをキープしておくのが流行りました。今回の本格焼酎ブームの素地を作ったのはそれらと言っても良いと思われますが。さて、このように大分の名産品という印象の強い麦焼酎ですが、元々は長崎県壱岐地方で長らく生産されてきたものであり、数百年の歴史を持ちます。麦焼酎といえば大分というイメージが強くありますが、これはここ30年くらいのイメージであり、歴史的には壱岐焼酎が麦焼酎の元祖となります。味わいや香りは同じ麦から作られるウイスキーに近く、洋酒がお好きな方が本格焼酎になじむにはもっとも適切といえるでしょう。前述しましたとおり、大分県と長崎県壱岐島が生産拠点です。大分では、減圧蒸留・イオン交換樹脂という手法で作られることが多くすっきりとした飲み口の麦焼酎が主流です。また、最近では常圧蒸留を使用して、個性ある製品を出している蔵も登場しています。一方、壱岐では伝統的な製法(主原料は麦、麹は米麹、常圧蒸留、米麹と麦の配合比率は約1:約2)を守る7軒の蔵が残り、個性を競っています。

いも焼酎
さつまいもと米麹、あるいはさつまいも麹から作られます。さつまいもはでんぷん質が少なく、麹にしてもアルコールが出来にくいため、一般的に米麹で仕込みます。鹿児島県が一大生産拠点であり、鹿児島で酒と言えばいも焼酎のことを示します。第一次焼酎ブームの際には「すっきり」「さっぱり」という流れだったため、香りが濃厚で味わい深いいも焼酎は「臭い」「くどい」と見られてしまい、注目されませんでした。味わいは甘い舌触りが特徴で、香りは米や麦に比べて際だちます。これは麦や米と異なり、常圧蒸留で蒸留されることが多いこととさつまいも自体の香りや甘みが米や麦と違って強いことが理由と考えられています。

黒糖焼酎
黒糖を使用した酒類は通常リキュール類などに該当し、税率が焼酎とは異なる高税率となります。しかし、日本復帰前から奄美諸島で生産され、名物となっていた黒糖焼酎を何とか生かすために、必ず麹を使用して仕込むこと、大島税務所管内のみの特例とする という2点の条件で特別に認可されました。そのため、他の焼酎が法律的には日本全国で生産できるのに対して、黒糖焼酎は奄美諸島でしか生産できない特別な名産品となっています。砂糖に由来している黒糖焼酎は黒糖独特の香りと甘い味わいが特徴です。焼酎ですから当然糖分は一切含まれていません。そのため、女性に人気が高く、注目されています。
 
そば焼酎
そば焼酎は今までに紹介した焼酎に比べて歴史の浅い焼酎です。1973年に雲海酒造によって初めて開発されたそば焼酎は、麦焼酎とともに第一次焼酎ブームの牽引役となりました。現在では長野や北海道といったそばどころを中心に全国で作られています。そば焼酎は、ほのかにそばの香りが漂い、舌の上にそば独特の甘さが残る焼酎です。そのため、ロックが大変に美味しく「そば焼酎といえばロック」という人も多くいます。ロックだけでなく、おそばを茹でた茹で汁であるそば湯で割ると上質のそばを食べているような心地がします。蒸留をしているとはいっても、そば焼酎はそば由来の焼酎ですので、そばアレルギーをお持ちの方は飲み方や体調に十分ご注意ください。

泡盛
沖縄で作られる伝統の蒸留酒が泡盛です。泡盛は黒麹菌という麹菌を米に付けて作られることが条件となっており、主にタイ米で醸し出されています。また、他の焼酎がまず麹を発酵させ、そこへ原材料を投入して二次発酵を行うのに対して、泡盛は黒麹菌をタイ米に付け、発酵させ、それをそのまま蒸留する一次仕込み・全麹という手法が用いられます。泡盛の特徴は「古酒」(クースー)にあるといっても良いと思います。最近でこそ、他の焼酎でも長期熟成させた「古酒」(こしゅ)が出回るようになりましたが、もともと長期熟成させるという考え方は泡盛が一番根強くあります。これは何かお祝い事があったり、節目となる出来事があった際に泡盛を甕に入れ、保存しておくという琉球地方の習慣があったためです。第二次世界大戦で沖縄は焦土と化し、琉球王朝時代から延々と受け継がれてきた伝統の古酒もほとんど破壊されてしまいましたが、現在でもこうした習慣は残っており、100年後の子孫にこの伝統と平和を伝えるべく居酒屋の店主が中心となり「百年古酒」という運動も行われています。

粕取り焼酎
今までの分類はすべてもろみを作り、そこからアルコール分を蒸留する「もろみ取り焼酎」です。実は焼酎にはもう一つ清酒などの搾り粕を使用して作る「粕取り焼酎」と呼ばれる焼酎があります。一時期だいぶ少なくなっていましたが、最近の本格焼酎ブームで徐々に復権しつつある種類の焼酎です。清酒を作ると搾り粕が残ります。この搾り粕に籾殻を混ぜて、下から他の焼酎と同様に熱風を送り込みます。そうするとアルコール分が抽出されます。このとき、籾殻の焦げたにおいがアルコール分とともに抽出されるため、大変にあくの強い、個性的な癖のある焼酎となります。本来、粕取りとはこのような手法で作られます。しかし、現在では吟醸酒を造る清酒蔵が増加し、それとともに清酒粕をもとにもろみを作り、これを蒸留する場合が増加しています。こうした籾殻を使用せずに清酒粕でもろみを作り蒸留することで日本酒と間違えるような香りの高い粕取り焼酎が増加しています。もともと粕取り焼酎は早苗饗(さなぶり)という田植え後のお祭りで愛飲されていた庶民のお酒でした。ここから粕取り焼酎に「早苗響焼酎」という別名がついたのです。特に九州北部では早苗饗においては粕取り焼酎が飲まれており、かつては粕取り焼酎の専業蔵も存在していたほどでした。こうした伝統を復活させようという動きもあり、実際に籾殻を使用した粕取り焼酎の醸造再開に向けた実験も行われているようです。ただ、焼酎ブームの陰で清酒の生産量が低下し、清酒粕も少なくなってしまっています。この少ない清酒粕を粕漬けなどの分野がねらうため、ますます粕取り焼酎は製造の危機に瀕しています。

そのほかの焼酎
これらの焼酎のほか、清酒をそのまま蒸留した清酒取り焼酎、栗を使用した栗焼酎、しそを使用したしそ焼酎、胡麻を使用した胡麻焼酎、山芋を使用した山芋焼酎、牛乳を使用した牛乳焼酎などが製品化されております。焼酎では有りませんが、イタリアのグラッパはワインを醸造する祭に残った葡萄の皮を発酵させ蒸留し造られます。従ってグラッパは葡萄焼酎?と表現しても良いのでは?グラッパや粕取りなどは一年の農作業・醸造作業を喜び自分達の育てた農作物を最後まで有効に使うと言う意味で素晴らしいお酒だと考えます。